人が自分と同じようにものごとを捉えているとは限らない。実家に帰省して、母親とGoogleスプレッドシートについて話しているときにそんなことを感じました。
人間は自分がすでに知っている概念で物事を捉えるため、まったく新しい概念はそのためなかなか理解ができないのではないでしょうか。そのため新しい概念は、既知の複数の概念を組み合わせることで理解しやすくなります。またひとつ理解するとそれを横展開することで、似てはいるけど異なる概念を理解するのに役立ちます。
難しいことを書きましたが、母親に理解してもらいたくてなんとか優しく説明できないかと試行錯誤の記録と思っていただければ。
クラウドの具体例:日常生活で使っているクラウドサービス
実は自分が普段使っているものの中にもクラウドサービスがあります。それを具体例としてクラウドを説明してみましょう。
GmailやYahooメール vs. ローカルメール
「例えば、GmailやYahooメールを使ってるよね?これはクラウドベースのメールサービスなんだ。送られてきたメールや自分が送ったメールはインターネット上に保存されているから、パソコンやスマホなどのいろいろなデバイスからでもアクセスできるんだよ。」
「一方で、昔使っていたOutlook Expressみたいなパソコンに入っているメール用のソフトは、メールを自分のパソコンにダウンロードして保存していたから、そのパソコンからしかメールを確認できなかったよね。」
みたいな感じでしょうか。厳密にはローカルメールもクラウドサービスからダウンロードしてくるため、設定次第で複数端末でも確認できるのですが、理解を深めるために単純化しています。
GoogleドライブやDropbox vs. 外付けハードディスク
「次に、GoogleドライブやDropboxを考えてみて。これらはオンラインのデータ保存サービスで、写真やWord文書やExcelファイルとかをインターネット上に保存しておけるんだよ。だからパソコンから保存したファイルでも、インターネットにつながっているiPhoneとかのスマホからでもアクセスできるんだ。これもクラウドのサービスのひとつだね。」
「逆にクラウドじゃないデータ保存は、自分のパソコンの外付けハードディスクやUSBメモリにファイルを保存することだね。データは物理的なモノに保存しているから、その物理的なデバイス(装置)を持ち運ばないとファイルにアクセスできないよね。」
書いてみるとデータ保存のクラウドとローカルの比較の方が説明が簡単で、かつ母親にも理解してもらいやすい気がします。
Googleドキュメント vs. Microsoft Word
厳密にはMicrosoft Wordも同期できたりするのでパソコン上だけで動作するものではないのですが、クラシックなWord環境と比較するとわかりやすそうです。
「母さんはMicrosoftのWordを使って太極拳クラブの総会案内を作っているよね。そのWordファイルを町の公民館で、みんなの意見を聞きながら編集する場合を考えてみよう。その場合、家で作ったファイルをUSBメモリとかにコピーして、そのUSBメモリを公民館のパソコンに挿して、データを移動させるでしょ。家から持ち運ぶことと、持ち運んだ先でコピーすることをしなくちゃいけないのが、普通のやり方だよね」
「一方でクラウドのサービスでもWordに似たものがあって、Googleドキュメントていうのが有名だね。インターネットに接続してる必要があるけど、家のブラウザ上で編集して保存すると、公民館のパソコンでもそのファイルを続けて編集することができるんだ。もちろん家に戻ってきたら、そのファイルは更新されているから、さらにその続きから編集することもできるよ」
NetflixやAmazon Prime vs. DVDやBlu-ray
「そういえば母さんはYouTubeで動画を観たり、radikoのアプリでラジオ聴いてるよね。あれも実はクラウドの一種だよ。インターネットにつながっているiPadとかiPhoneで、常時映像とか音声のデータが送られてきてそれをリアルタイムで再生しているんだよ。逆にインターネットがつながってないと、観たり聴いたりできないでしょ?でもどんどん新作が追加されてくるのも、クラウドのいいところだね。」
「逆にクラウドじゃない映像とか音楽の再生方法を考えてみようか。昔だとカセットテープやビデオテープ、今だとDVDとかBlu-rayディスクがあるよね。実際の物理的なメディアを買って自宅のプレイヤーで再生するけど、ディスクとかがなければ観られないよね。」
YouTubeなどのストリーミング系のエンタメサービスも母親の実体験に即しているので、理解度は高い気がします。
クラウドは四次元ポケットみたいなもの
クラウドとローカルを身近な実際の例で示してみましたが、それぞれを使っていないお母さんもいるかもしれませんし、まだまだピンとこないお母さんもいるかもしれません。そこで次は四次元ポケットでたとえてみました。
「ドラえもんのおなかのポケットあるよね、四次元ポケット。あれを持ち歩いてると、どこでもいろんな道具を取り出して使うことができるでしょ。四次元ポケットがiPhoneで、そこから取り出せる道具がいろんな曲や映像って考えると、四次元ポケットの中の空間がクラウドってことなんだ」
うーん、逆に難しくなったかな…。
なぜクラウドが便利なのか:5つの利点
前述の具体例にさらにメリットを付け加えると、納得感が高くなりそうな気もします。
クラウドはどこからでもアクセスできる
「DropboxとかGmailとかYouTubeのときも説明したけどクラウドのデータとかサービスは、iPhoneとかインターネットにつながっているものさえあれば世界中どこからでもアクセスできるよね。例えば、旅行先でもDropboxに保存してある写真を見られたり、Gmail読んだり、YouTube観れるでしょ。」
「でもクラウドじゃないの場合は、ちゃんと保存したモノ自体を持ってないとデータとかにアクセスできないよね。だから写真のアルバムとかDVDとかを持って出かけなくちゃいけなる。クラウドならそんな心配はなくなるね。」
クラウドはバックアップが簡単
「クラウドサービスは自動的にデータをバックアップしてくれることが多いよ。パソコンやiPhoneが壊れても、映画や音楽やメールはクラウド上に保存されているから安心なんだ。」
「クラウドじゃない場合は、予備を準備するにはDVDをコピーしたり、Wordのデータを複数のハードディスクに保存したりしなきゃいけないよね。バックアップをとることはできるけど、クラウドと比べて手間がかかるね。」
バックアップというよりそもそも手元にない、という説明の方がわかりやすいかも…。容量節約と説明が分離できるからいいのかなぁ…。
クラウドはデバイスの容量を節約できる
「クラウドはそもそも手元にデータを置いておかずに、インターネットを通じてデータにアクセスするから、iPhoneやパソコンにデータを保存しておく必要がないよね。だから結果として、パソコンとかの容量を節約することができるんだ。大きなファイルやたくさんの写真をクラウドに保存しておけば、パソコンとかの容量を圧迫することがないんだよ。」
「クラウドじゃない場合は、大容量のデータを保存するために、外付けハードディスクや追加のストレージを買わなきゃいけないけどね。」
クラウドはコスパがよい
「クラウドサービスは、必要な分だけ料金を払う仕組みが多くて、コストを抑えながら利用できるの。特に個人利用では無料プランも多く提供されているんだ。」
「クラウドじゃない場合は、音楽ファイルを多く保存するためにストレージデバイスを買う初期費用がかかるし、故障や紛失のリスクもあるけど、クラウドならその心配が少ないよね。」
クラウドのデメリット:知っておきたい3つのポイント
便利なクラウドですが、デメリットもあります。母親に説明するときは、デメリットをどのくらい説明するかも重要かもしれません。あまりネガティブに言い過ぎると拒否反応がでてしまうかもしれないですし。
主なデメリットは次の3つかなと思います。
インターネット環境に依存する
「クラウドとそうじゃないものを比べて説明してきたけど、何となくクラウドの感じはわかった?ただクラウドサービスは必ずインターネットを利用するから、インターネット接続がないと利用できないんだ」
「それから音楽とかは、ダウンロードしながら再生するから、通信速度が遅い途中で止まったりするし、通信料が多くかかってしまうこともあるんだ」
ここらへんはインターネットを介したサービスということで、メリットと一緒に説明してもいいかもしれませんね。
長期的なコスト
サブスクサービスの場合は継続してコストが発生するので、それをどのように捉えるかで金銭的なメリデメの受け取り方が変わってきそうです。メリットのところで「コスパがいい」と説明しているので、ここは両者を合わせながら説明した方が納得してもらえるかもしれません。
「クラウドのサービスは無料のモノも多いけど、広告なしのプランだと有料の場合が多いよ。そう考えると毎月お金がかかっちゃう。もちろん買うよりは安い場合がほとんどなんだけどね」
クラウドサービスを提供している会社にいろいろ依存してしまう
「あと普段は意識しておく必要はないんだけど、クラウドサービスを提供している会社がつぶれちゃうとデータも無くなってしまうよね。そうじゃなくてもクラウドサービス提供会社のサーバーにデータとかが保管されてるから、万が一セキュリティが破られると、プライバシーが侵害されるとか困ったことが起きちゃうかもしれない。そういう意味でクラウドサービスを提供している会社にいろいろ依存しているってことは認識しておいた方がいいかも」
母親にクラウドを説明するのはむずかしい
実際に母親を想像して、いろんな例を出して説明を考えてみました。それにしても難しい。